被災者支援法 ためらわず実行を急げ〜信毎社説

8月22日付け、信濃毎日新聞社説「被災者支援法 ためらわず実行を急げ」から

信濃毎日新聞

0822日(木)社説「被災者支援法 ためらわず実行を急げ」

 

 「子ども・被災者支援法」に基づく支援策の基本方針を打ち出さないのは違法として、福島県の住民らが国を提訴する。

 

 福島第1原発の事故で被災した子どもや妊婦の医療費の減免、自主避難者も対象とした住居確保や学習・就業支援を盛り込んだ支援法は、昨年6月に成立している。1年2カ月が過ぎても、法を運用するための基本方針が決まっていない。

 

 長引く避難生活で家計の負担は増している。住民による提訴は、暮らしへの不安や対応が鈍い国への憤りの表れだろう。

 

 「支援対象を定めるのが困難」との言い訳は通らない。対象範囲をできるだけ広げ、早急に支援策を実施すべきだ。

 

 支援法は、原子力政策を推進してきた国の社会的責任を明記。避難指示区域にいた住民だけでなく、「一定基準以上」の放射線量が計測された地域に住んでいたか、住み続けている人たちも生活支援の対象とした。

 

 この「一定基準」の定義がまとまらない。政府が避難指示の基準とした年間被ばく線量は20ミリシーベルト。一方、平常時の限度量は1ミリシーベルトとなっている。一つの数値で対象を線引きすると、不公平感が生じる心配は確かにある。

 

 かといって、手をこまぬいてはいられない。避難者には子育て中の世代も多い。子どもを安全な場所で育てたいと考えるのは当然だ。夫が居住地に残り、母子だけ避難する世帯も目立つ。二重生活に無理が生じ、帰還せざるを得なくなったり、預貯金を取り崩したりといった事例も出ている。

 

 災害救助法に基づく住宅支援制度の期限も来年3月に迫っている。避難者の負担を思えば、ためらっている暇はない。

 

 岡山市は古い市営住宅を改装して家電製品を備え付け、避難者に仮住まいとして提供する制度を取り入れている。避難者を受け入れているこうした自治体とも連携し、幅広い方法で暮らしを支える仕組みの検討も求められる。

 

 このままでは支援法が成立した時の避難者の期待を裏切ることになる。与野党は官僚任せにせず、基本方針の早期策定に向け、調整を進めてもらいたい。

 

 原発事故による健康、食品、飲料水への影響について、国の情報提供が不十分だったことも自主避難者を増やした要因だ。東北や関東地方のすべての子どもたちの健康管理に国が責任を持つなど、住民の不安をぬぐうよう努めることが欠かせない。